知識は「暗記」よりも「使いやすい形での保存」が大切!「知的戦闘力を高める独学の技法」山口 周 著

こんにちは。ミドノン( @LearnMidonon)です。

今週読んだ本を紹介します。

知的戦闘力を高める 独学の技法です。

なぜこの本を読んだのか

この本が気になったきっかけは、次の書評を読んだことです。

この記事の中にある、次の記述に強い共感を感じました。

ふとした瞬間に「あ、これってこの前のあの本のあの話とまったく同じ構造だ」と解がみえたときの気持ち良さはたまらないものがある。

「同じようなことに気持ちよさを感じる人」が他人に紹介する本です。

気になるに決まっています。

 

また、「自身のこれからのキャリア」を考えると業務以外のことを「独学」することは必須ともいえます。

そんなわけでポチりました。

基本情報

どんな本か

書名にあるように「独学の方法」を述べている。

ただ、よくある勉強本のように「勉強法・暗記術」を説明しているのではない。

「何を」「どのように」「なぜ」勉強するのかという部分の説明をしている。

また、学んだ内容については「忘れること」を前提にしているのも斬新。

「知識を蓄える」ことではなく、「知識を本当に使える武器へと変える」手法を紹介している。

目次

はじめに

序章 知的戦闘力をどう上げるか?
――知的生産を最大化する独学のメカニズム

第1章 戦う武器をどう集めるか?
――限られた時間で自分の価値を高める

第2章 生産性の高いインプットの技法
――ゴミを食べずにアウトプットを極大化する

第3章 知識を使える武器に変える
――本質を掴み生きた知恵に変換する

第4章 創造性を高める知的生産システム
――知的ストックの貯蔵法・活用法

第5章 なぜ教養が「知の武器」になるのか?
――戦闘力を高めるリベラルアーツの11ジャンルと99冊

おわりにかえて

学習前の「戦略」が大切

独学というのは「戦略」「インプット」「抽象化・構造化」「ストック」という四つのモジュールからなるシステムと考えることができます。
5ページより

他の学習に関する本でも同じようなことを言っていた。

つまり、次のような流れである。

 

いきなり「勉強するぞ!」と闇雲に知識を詰め込むのではなく、「何を」「どのように」勉強するのか、きちんと戦略(=計画)を立てた後にインプットしていく。

 

そしてインプットしたもの(具体的・特定の場合のみ成立)に共通しているものを抜き出す=抽象化・構造化。
そのようにして、さまざまな場面で利用できる形で知識を蓄える。

 

「勉強しなきゃ」と焦るのはわかるが、闇雲にやっては労力の無駄。

まず、戦略を立てるのが大事。

この戦略に対して「どのように」っていうのがフォーカスされがちだが、最初に考えるべきは違う。

「何を対象とするのか?」こそが最重要である。

 

ただ、「何を学ぶのか?」について、なかなか難しい問題だと思う。

「自分のキャリア」を良くするために勉強したいと考えてるんだけども、「何が必要とされるのか」「何が役に立つのか」全くわからない 。

「何を学ぶのか」をどう決めるのか

「ジャンル」ではなく「テーマ」で選び、差別化する

闇雲な独学に突入して非効率な時間の分散投資をするよりも、ある程度「学びのターゲット」を定めたほうがいいという指摘をしました。さてそうなると、当然のことながら「どのジャンルを学ぶかと」いう論点で考えてしまいがちなのですが、ここで注意しなければならないのは「独学の方針は、ジャンルではなく、むしろテーマで決める」ということです。
63ページ

他の本でも「何を学ぶかをまず決めて、それから学習する教材を決めろ」ってのはよくあったが、その「何を学ぶか」という方向性について説明しているものとは出会ってこなかった。

まぁ、自分で決めるべきことだから当然なんだけど、考え方のヒントくらいは知りたいよね。

 

その「学習する方向性」の決め方に関して、「ジャンルではなくテーマで選べ」と述べている。

なぜ、「ジャンル」ではなく「テーマ」で決めるのか。

 

ここでいうジャンルは「経済学」とか「心理学」など「分野」くらいの意味合いである。

つまり「ジャンルに沿って勉強する」ってことは、既に体系化された枠組みの中で勉強することを意味する。

枠組内での学びでは、他人との差別化は容易ではない。

だって皆が同じ体系・基準・論理・価値観で学ぶのだから……

そのため、「自分に特有の知識・思考」となりにくく、価値を高めることができないので、「ジャンル」で選ぶことを避けるように伝えている。

 

では「ジャンルではなくテーマで決めろ」という「テーマ」とは何なのか。

ここで「テーマ」と呼ばれているのは、「自分が追求したい論点」のこと。

と言ってもよくわからないですよね。私もわかりません。

 

著者の場合は「イノベーションが起こる組織とはどのようなものか」「美意識はリーダーシップを向上させるのか」「共産主義革命はいまだ可能なのか」「キリスト教は悩めるビジネスパーソンを救えるか」といったテーマを持って独学に挑んでいるそうです。

学習に入る前の「自分のテーマを何にするのか」を考えるだけで、だいぶ時間がかかりそうです……

ゼロから考えるのは難易度高すぎるので、しばらくは節操なく、さまざまな分野に浅く広く手を出して、きっかけをつかみたいと思います。

 

「かけあわせる」という発想

これはキャリア戦略にも関わる事なのですが、多くの人は「自分が持っているもの」を活かそうとせず、「自分が欲しいもの」を追求してしまう。でも、そうやって追求したものが、その人のユニークな強みになるかというと、これはもう全くならないんですね。最も大事なのは、「自分がいますでに持っているもの」を、どのようにして活用するかを考えることです。しかし、これがなかなか難しい 。
74ページより

「価値の高い人にあって、自分にないもの」を身につければ、自身の価値も上がりそうなものだが、そうではない。

そのように自分の価値を高めようとしても単なる「優秀な他人の劣化コピー」としかならない。

「自分の価値を高める」ためには「ユニーク(自分に特有)」であることが大切なのでコピーでは意味が無いのだ。

 

しかし、「世界で自分だけが可能なこと」をもっている人は殆どいない。

ではどうすればいいのか?

著者いわく、ユニークな存在になるためには、「自分の持っているもの」をかけあわせれば良いらしい。

しかも、かけあわせる要素というものは、特別に秀でたものである必要はなく、普通よりちょっとできるくらいで十分とのこと。

 

ちょっと計算してみれば、納得できる。

たとえ上位40%ぐらいのものであっても、4個かけあわせれば上位3%ぐらいにはなる。(0.4*0.4*0.4*0.4=0.0256→3%)

 

ただ、「何をかけあわせるか」っていうのが問題。

「自分が持っているもの」はすでに持っているがゆえに「できて・感じて・知っていて当然」と考えてしまい、なかなか強みと感じられない。

そのため、「自分が強みを持っていること」に気づかず、「他人が持っているもの」にどうしても憧れてしまいがち。

それでも、自分の持っている本性や興味を主軸に選ぶべきであり、他人が持っているものや自分が欲しいものを主軸にしてはいけない、とのこと。

 

自分ならではのユニークさ、組み合わせられる物って何なんだろうか??

さらに「自分が持っているもの」に気づいても、「何と何を掛け合わせるのか」がまた難しい。

これは「テーマを考える」、「戦略を考える」っていうのにも当てはまるけども……

インプットについて

 やっぱり歴史から学ぶことは多い

歴史を学ぶことで、どうして知的戦闘力が高まるのか?
それは歴史が ケーススタディ の宝庫だからです。
私たちが日々向かい合う現実の問題は唯一無二のものに見えますが、歴史を長く遡れば同様の事態に直面した事例は限りなくあります。
37ページより

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」って言葉はよく聞く。

それを詳しく説明すると、引用したこの表現になるんだろうな。

 

以前読んだ、「思考軸の本」でも同じように、「過去の歴史から学べ」ってあった。

  • 起きた問題に対して、過去の似た事例を参考に対応策を取る
  • 過去の推移を参考に、今後起こりそうな展開を予測する。

ちょっと考えれば当たり前のことなんだけど、なかなかできないよね。

「書籍の知識」のみでは単なる劣化コピー

書籍やネットの情報というのは、「他の誰かの知的生産プロセス」を通じて出力された情報ですから、いわば劣化コピーのインプットでしかない
49ページより

「書籍やネットの情報」について、「著者がお金・時間をかけて体験・会得したものを短い時間で追体験できる」という点でコスト・タイムパフォーマンスに優れており、とても有用だと思っていた。

そのため、デメリット的な見方はしたことがなかったので、注意しなければならないと感じた。

 

言われてみるとその通りで、どんなに本の内容に精通し、完全に理解したとしても、著者の劣化コピーでしかない 。

それを原料にして加工したり、組み合わせたりして「ユニークさ」を出さないと「自分の価値」には結びつかない。

iPhoneとかも既存の技術のくみあわせによるイノベーションだもんね。

 

また、インプットと言えば本やネットの情報など「他人由来のもの」を想定しがちだ。

しかし、本書で指摘されているように「自分の目や耳といった器官を通じたインプット」というものもある。

こちらは加工せずとも、インプットした時点で「自分だけのもの」である。

つまり、「他人の劣化コピー」にはなりえないので、このような「自身の五感・体験によるインプット」を元にすれば差別化が容易になりそう。

ただ、自分の感性を磨くってのは才能に依存しそうで、困難かも……

インプット目的によって「対象」と「方法」を変える

読書には、大きく次の四つの目的があります。

  1. 短期的な仕事で必要な知識を得るためのインプット→主にビジネス書
  2. 自分の専門領域を深めるためのインプット→ビジネス書+教養書
  3. 教養を広げるためのインプット→主に教養書
  4. 娯楽のためのインプット→なんでもあり 

87ページより

これらの目的に応じて読書の方法、読書した後にやることは変えるべき。

これこそが「読書ノートを作った方がいい」「読書ノートは無駄」という問題の回答になるかもしれない。

 

1は「短期間にその分野についてのリテラシーを持つこと」が目的で、数時間から数日くらいの短期間で狭く浅く学ぶためのもの。

例えば、「流行りの技術(ブロックチェーンとか)を仕事に活かせないか」を知るために軽く調べるなどが該当するのかな?

「あとで振り返ったり」ということはなさそうなので、読書メモは必要ないかな。

直近で必要な勉強だし。

 

2は自分が専門としてるものについて、知的ストックを増していくための読書。

これは専門家としての知的ストックを作っていくことが目的だから、時間軸は数年あるいは数十年ということになり、狭く深く学んでいくため学習。

私の場合は、例にあるビジネス書ではなく、技術書が対象になりそうだ。

相関式を始めとして、引用したり参照したりと頻繁に使いそうだから、メモしておかないと……

 

3は直接は仕事に関係がない、教養について知識を得ることを目的にする読書。

古典や文学を読んだりとか。

直接的には関係なくても間接的にはあるわけで、「今までのセオリーが役に立たないような場面」において、古典の時代から伝わってる「普遍的な知性」っていうのが役に立つかもしれない。

これも時間軸は数十年単位になり、忘れそうだからメモは必須かな。

 

4は娯楽のための読書。

これは言うまでもなく、単なるエンターテイメントで好きな本を好きなように読む。
それこそなろう小説でもなんでも。まさに単なる趣味。

 

1~4のパターンに分けたけど、「ビジネス」と「教養」に大別できる。

ビジネス書は狭く深く読むものなので、忘れる恐れもなく、内容もビジネスに直結しているから、わざわざ自分で読書ノートを作る必要性は低い。

 

それに対して、教養系の本はいつ、何が役に立つかわからない。

後でどんな形で、どんなビジネスの役に立つのかが、読む時点ではわからないことがほとんど。

だから、後で立ち返って考えたり、検証したりするために読書ノートの作成が必須となる。

抽象化=利用しやすい形でストックすること

「抽象化」の力を高めるためのコツを紹介しています 。

要は「読書ノートに何を書くか」ですね。

(学んだ知識をストックしておくことに対して)このストックの際に、常に「学んだ知識」と「抽象化によって得られた仮説」をセットにして記録することを心がけるということです。
具体的には、次の質問について、自分なりの答えを書いてみることをお勧めします。

  1. 得られた知識は何か?
  2. その知識の何が面白いのか?
  3. その知識を他の分野に当てはめるとしたら、どのような示唆や洞察があるか ?

174ページより

折角読書ノートを作ったとしても、「気になったこと」そのままでは再利用しにくい。

そのため、上記3つの質問を使って再利用しやすいように加工してからストックするのがいい。

 

この中で重要なのは3つ目「他分野ではどう使えるか」だと思っている。

これこそが「個別の事例」を「汎用性の高い知的ストック」へと昇華するためには欠かせない。

 

また、上記の「気になったところ」を整理するプロセスとして、次のような手法を紹介している。

初読→気になったところに、とりあえずアンダーラインを引く
再読→アンダーラインを中心に読んでやはり面白い、重要と思われる箇所に付箋を貼る
三読→付箋を貼った箇所を読んで、後々に参照しそうな箇所を選り抜いて転記する
204ページより

このようなフロー図が載っていました。

f:id:midonon:20180204134454j:plain

アンダーラインを引く「気になったところ」って何だよ?と思う人もいるでしょう。

次のように例が挙げられていました。

アンダーラインを引くべきは次の3箇所
後で参照することになりそうな興味深い「事実 」
興味深い事実から得られる「洞察」や「示唆」
洞察や示唆から得られる「行動」の指針

そして、アンダーラインを引く上でポイントになるのが「自分が共感できる情報」「気持ちいいい情報」だけではなく、「共感できない情報」「反感を覚える情報」にもアンダーラインを引いておくということ。

「心地よい」ことは、自分の価値観や世界観を肯定してくれるので、そればかり摂取しがち。

でも、大勢と同じ様にしていたのでは自身の価値(=知的戦闘力)は高まらない。

 

ここまで読んでわかるように「アンダーライン」や「読書ノート」はめんどくさいプロセスです。

そのため、1冊の本につき最大9箇所までにすることを推奨しています。

まとめ

この本を読んだ目的

「自身のこれからのキャリア」のためには、業務以外のことを「独学」することは必須だと考えたから。

良かったこと、感じたこと

「学ぶ前」に戦略を立てることの大切さは知っていたが、どのように立てるかについては知らなかった。

  • ジャンルではなくテーマを決める
  • 他人との差別化こそが価値
  • 複数要素の掛け合わせが大切

また、勉強=技術と思い込んでいたが、リベラルアーツの有用性を学んだ。

どう活かすか

自身のテーマを決めるために、さまざまなことに興味をもつ。

読書する際は感想を殴り書くだけで終わらせず、「どのような場面で使えるか」と可能な限り抽象化・構造化して知識をストックする。

コメント