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4000億円動かした男の理念とは?「生涯投資家」村上世彰著

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こんにちは。ミドノンです。
読んだ本を紹介します。

「村上ファンド」で有名な村上世彰氏の「生涯投資家 」です。

なぜこの本を読んだのか

村上世彰という名前を聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
連想されるのは次のような内容だと思う。 

  • 「お金儲けは悪いことですか?」の言葉
  • ホリエモンと同時期に逮捕
  • ニッポン放送の買収
  • 村上ファンド

一時期、ニュースなどで話題になっただけに聞き覚えがある人が多いと思う。
しかし、「どのような」事件が起こり、「なぜ」逮捕されたのかは知らない人が多いのではないか。私はそうだった。

また、4000億円ものお金を動かしていた人が、どのような考え方で投資をしているのかが気になった。

そのため『「事件の核心」と「わが投資術」』という煽り文句に負けて購入した。

基本情報

どんな本か

灘高、東大法学部、通産省を歩んだエリートである村上氏がなぜ投資の世界に飛び込んだ理由、その結果が村上氏の目線で書かれている。

ニッポン放送、阪神鉄道、東京スタイルなどに対して、村上氏がどのような考えで投資に至り、どのような結末となったのか。

また、投資に対する哲学や日本の企業とその経営者たちへ思うことを述べている。

「はじめに」に村上氏がこの本を執筆した理由について次のように説明している。

私はこの本の中で、自分がずっと目指してきたもの、何をやろうとしたのか、なぜコーポレート・ガバナンスにこだわるのか、などについて、自分なりの答えを出したいと思っている。

目次

はじめに――なぜ私は投資家になったか

第1章 何のための上場か
上場のメリットとデメリット
官僚として見た上場企業の姿
コーポレート・ガバナンスの研究
ファンドの立ち上げへ――オリックス宮内義彦社長との出会い
日本初の敵対的TOBを仕掛ける
シビアな海外の投資家たち

第2章 投資家と経営者とコーポレート・ガバナンス
私は経営者に向かなかった/私の投資術――基本は「期待値」、IRR、リスク査定
投資家と経営者との分離
優れた経営者とは
コーポレート・ガバナンス――投資家が経営者を監督する仕組み
累積投票制度を導入せよ――東芝の大きな過ち

第3章 東京スタイルでプロキシーファイトに挑む
東京スタイルへの投資の始まり
十五分で終わった社長との面談
激怒した伊藤雅俊イトーヨーカドー会長
決戦の株主総会
なぜ株主代表訴訟を起こしたか
長い戦いの終わり

第4章 ニッポン放送とフジテレビ
フジサンケイグループのいびつな構造
ニッポン放送株式についてくる「フジテレビ株式」
グループ各社の幹部たちの思惑
本格的にニッポン放送への投資に乗り出す
生かされなかった私たちの提案
私が見たライブドア対フジテレビ
逮捕

第5章 阪神鉄道大再編計画
西武鉄道改革の夢――堤義明氏との対話
そして阪神鉄道へ
会社の将来を考えない役員たち
阪神タイガース上場プラン――星野仙一氏発言の衝撃
またしても夢は潰えた

第6章 IT企業への投資――ベンチャーの経営者たち
ITバブルとその崩壊
光通信とクレイフィッシュ
USEN、サイバーエージェント、GMO
楽天――三木谷浩史氏の積極的なM&A
ライブドア――既得権益に猛然と挑んだ堀江貴文氏

第7章 日本の問題点――投資家の視点から
ガバナンスの変遷――官主導から金融機関、そして投資家へ
日本の株式市場が陥った悪循環
投資家と企業がWin‐Winの関係になるには
海外企業の事例――Appleとマイクロソフト

第8章 日本への提言
株式会社日本
コーポレート・ガバナンスの浸透に向けて
モデルケースとしての日本郵政
もう一つの課題――非営利団体への資金循環
世界一の借金大国からの脱却

第9章 失意からの十年
NPO/東日本大震災について
日本における不動産投資
介護事業
飲食業
アジアにおける不動産事業
失敗した投資の事例――中国のマイクロファイナンス、ギリシャ国債
フィンテックへの投資

おわりに

村上氏の理念と理想とする投資

企業にとってのお金は、人間の身体でいうなら血液だ。血液の流れが滞ると、健康全体に悪い影響が出る。企業が成長のために投資をしたり、投資家が新しい事業に投資をするには、いずれもお金の流れが潤滑であることが大切なのだ。

私の研究は机上の空論となっていた。私は官僚という立場から資本市場を変えることに限界を感じ、投資家として自らプレーヤーになって変えていくしかない、と思うようになった。

商法で決められたルール、会社法で決められたルールがきちんと守られることを、私が投資する企業で立証し、他の会社へも広げていきたかった。

私はファンドで人のお金を預かる以上は、増やすことが第一の使命なのだということを認識した。だから、とにかく「増やす」ことを第一目標とした。

資本市場のあるべき姿を追求するという独立時の目標と、最大限のリターンを出さなければいけないという投資家からの要求は、時に相反することがあり、大きなジレンマとなってしまったのだ。

村上氏の投資に関する理念と実現するために村上ファンドを作ったこと、どの様な思いでファンドを運営していたかが書いてあり、とても興味深かった。
官僚になったエリートがなぜファンドマネージャーになったのか、その裏に熱い思いがあることを知り驚いた。

しかし、気になったのは「独立時の目標」と「投資家からの要求」のジレンマの部分だ。
ここで葛藤に苦しんだと書いているが、結局どのようなポジションをとったのかがよくわからなかった。
そのため、本を通じてダブルスタンダードを感じた。

また、日本の投資家からは理念に共感して人から資金を集めることができた、とあったので巨額の資金を求めて海外投資家に募ることをしなければ、ジレンマに悩むこと無く理念を貫けたのではないだろうか。

 

「コーポレート・ガバナンスと、その浸透による資金循環の促進」こそが経済成長を促す策だと、私が官僚の頃から言い続けてきたことであり、ファンドマネージャー時代も、純粋な投資家となった今も、この信念は変わらない。

私はこれからの日本にとって何よりも大切なことは、資金の循環だと信じている。資金の循環は、投資を中心として起こる。投資をし、リターンを得てその投資を回収し次の投資を行う、という流れは決して悪いことではない。もちろんリターンを得られることも得られないこともあるが、そうやって日本のあちこちで塩漬けになっている資金を回していくことの重要性を、これから日本を支えていく若者を中心に、伝えていきたい。

 本の結びで村上氏の信念とこれから行おうとしていることが述べられている。
「資金循環の促進が経済成長を促す」ということには強く同感できる。
投資→回収→再投資のサイクルが回ることで、成長する様子は想像しやすい。

そのためにコーポレート・ガバナンスの浸透が求められるのも納得できる。
しかし、コーポレート・ガバナンスが浸透しさえすれば循環する訳ではないと思う。
あくまで必要条件なだけだ。

日本の上場企業の経営者にコーポレート・ガバナンスを促進することで得られるメリットをわかりやすく示す必要があると思う。

少なくとも「ルールだから守れ。米国と比べて遅れている!」と叩きつけるだけでは、前向きには進まないように感じる。

投資家と経営者

投資家は、リスクとリターンに応じて資金を出し、会社が機能しているかを外部から監視する。経営者は投資家に対して事業計画を説明し、社内の人材や取引先などをマネジメントして最大限のリターンを出す。(…中略…)投資家と経営者は全く違うのだ。

村上氏はこのように、投資家と経営者を説明している。
この説明は投資家・経営者が雲の上の存在で、どのようなものかイメージできていなかった私の心にスッとはまった。

また、読了後に感じたことだが、やはり私は経営者でも投資家でもなく、労働者マインドが強いようだ。

 

 私は上場企業の経営者に、常々「自分の会社の株式を一定程度持つべきだ」と提案してきた。(…中略…)日本の上場企業には、自社株も持たずに経営している取締役が多すぎる。そうした経営者にあるのは給与や賞与という安定的な収入のみで、株価に連動するリスクやリターンがない。だから彼らは株価を気にせず保守的な経営に走り、退職金や賞与の形でいかに自分たちが利益を享受するか、に主眼を置いてしまう。

 経営者が株式を持てば株主目線が強くなるだろう、という考えは理解できる。
しかし、経営者の視点で考えると自社株をもつメリットはあるのだろうか?

役員報酬が業績に連動している以上、会社の発展・利益は追求しているだろう。
それどころか収入源が自社のみに偏ってしまい、いざという時に生活が崩れてしまう。
そういった意味では上場企業の経営者が自社株を持たないのは合理的かもしれない。

 

従業員の給料や地位は労働法によって保障されている。取引先は契約によって担保されている。ところが株主は、会社が倒産の危機に陥った時全てのリスクを追わなければならず、場合によっては投資した資金の全てが戻ってこない。

投資家は労働者や取引先と比べて引き受けるリスクは大きいと主張している。
たしかにそうかも知れない。
しかし、労働者に職業選択の自由があるように、取引先に他企業と契約する権利があるのと同様に、投資家にも資金を引っ込め、別の対象に投資する自由があるのではないか。
逆に他の2者と比べ、好きなタイミングで手放せる分、強い立場にあるのではないかとも思った。

 

日本の上場企業では、投資家と経営者の意識する指標が分離していることが多い。投資家はROEの向上を求めるが、経営者は安定経営のために手元に資金を確保したい気持ちが強い。それが純資産の過剰な増大につながるため、ROEは米国に比べて著しく低く推移している。

このことから現預金を減らし、ROEを高くしなければならない、と主張している。
そして、上場企業なのだから資金が必要となった場合は現預金ではなく、市場から調達すれば良いと述べている。

しかし、ここで思い出したいのはリーマンショックのような場合に市場を通じて資金を調達できるか?ということだ。
あのとき、株式市場が売りに走ったことは記憶に残っている。

  • いざという時に倒産しないよう現預金を抱えてROEが低い企業
  • ROEは高いが、いざという時にキャッシュが回せず倒産してしまう企業

投資家としては高値で売り抜けられればよいのだろうが、労働者や経営者としてはそうも行かない。
だからこそ、「ROEを高めよ」と声高に叫んでも、導入が進まないのではないか。
昔ながらの経営陣にもメリットを提示すべきだと思う。

「ルールだから」という理屈一辺倒で攻め立てても、なかなか進まない。

村上氏の投資術

 私の投資スタイルは、割安に評価されていて、リスク度合いに比して高い利益が見込めるもの、すなわち投資の「期待値」高いものに投資をすることだ。

 この「期待値」を的確に判断できることが、投資家に重要な資質だと私は考えている。(…中略…)リスクが高い場合や勝率が低い場合には投資を避けるのが普通だが、「期待値」と勝率は別の概念だ。勝率が低いと言われる場合でも、自分なりの戦略を組み立てることで、勝率は変わらなくても、期待値を上げることはできる。

この期待値を的確に判断するには、投資対象の経営者の資質の見極め、世の中の状況の見極め、経験に基づく勘など、実に様々な要素が含まれる

この本を買ったメインの理由である、村上氏の投資方法について。
4000億円を動かしていた人がどのように投資をしていたのかが書かれている。
各論のように細かく書いてあるのではなく、どのような考え方かという概念程度であった。

その中で村上氏が強調していたのが「期待値」である。
上がるか下がるかを予想するだけでも大変なのに、それに加えて具体的な金額まで想像するにはどのような材料と思考回路があればできるのだろうか?

ここで言う勘は将棋棋士の勘と同様なものに感じた。
つまり、過去の経験に基づく判断であるのに、無意識のうちに行った結果、本人はただの勘と感じるものである。

 

私はファンドで投資する銘柄を選ぶ際、時価総額に占める現預金(不動産、有価証券など換金可能な資産を含む)の割合、PBR、株主構成などを点数化してスクリーニングをする

「上がり始めたら買え。下がり始めたら売る」という哲学に従っている。

具体的なことについての記述を探したら、このような当たり前のようなことばかり書いてあり、投資に裏技などは無く、正道を行くしかないのだと思った。
そして、大多数の人と同じ正道を行き、非凡な結果を出せるからこそファンドマネージャーなのだと感じた。

また、村上氏の様な方でも最安値で買い、最高値で売るのは難しいとあって意外に感じた。

まとめ

この本を読んだ目的

村上氏の逮捕劇について、「どのような」事件が起こり、「なぜ」逮捕されたのかは知らなず、気になったから。

また、4000億円ものお金を動かしていた人が、どのような考え方で投資をしているのかが気になったため読んだ。

しかし、読了後にはそれらではなく、村上氏の投資に関する信念のほうが強く記憶に残った。

良かったこと、感じたこと

理念追求の立場と投資家として利益を追求する立場のダブルスタンダードが著しい。
どちらかに絞らず、両方のいいとこ取りな言説が多い。

投資家的にはそうだろうけど、経営者に受け入れるメリットが少なすぎるなー、と感じることが多かった。

村上氏のような優秀な投資家でも基本的な投資手法は変わらず、その規模と正確さがとても優秀なのだと知った。

どう活かすか

現状、個別株をやるつもりはあまりないので直接活かすことは少ない。
インデックスファンドを購入する際に「期待値」の意識を持つようにしたい。